「あ、そうそう」
尊都さんは歩き出そうとしていた足を止めて、私を振り返る。
「人身売買の件だけど。実は俺、それ調べてるんだよね」
「えっ?」
「この街の治安とか犯罪は、俺の仕事に関わることだから」
「は、はあ……」
この街の治安に「仕事」。
大学生じゃなさそうだなとは思ってたけど、いよいよわからない。
まさかこの街の極道の人とか……?
昔この街はでっかい極道に支配されてたって聞いたことがある。
でもその極道の組織はもう崩壊して、街の支配権を別の組織が奪ったはずなんだけど。
その支配を奪った組織ってなんなんだっけ?警察……じゃない気がするんだけどな。
頭をうんうんと捻っていると、尊都さんはそんな私にこう言ってきた。
「だから、刹菜は心配しないで。この件は絶対に俺たちが解決する」
「!」
自信に満ちた笑顔だった。
実際にきっと尊都さんにはそうできてしまえる手腕があるんだろう。
カリスマの風格が滲み出るその笑顔は私にそう思わせてくれる。
「だけど、手伝えそうなことあったら頼んでいい?ほら、刹菜って手枷と足枷壊しちゃうような子だし」
尊都さんは、そう言って微笑んだ。
尊都さんなりの、私への励まし、あるいは労い、もしくは誠意の形なのかもしれない。
「もちろん。願ってもないことです!」
私は、一瞬も迷わずに頷いた。
私に、できることがあるかもしれない。それに、こんなにすごい人が解決しようとしてくれている。
これだけハッピーで心強いことがあるだろうか。
私にできることは少ないけど、だからこそできることは一生懸命尽くさないとね。
私は心に強く決意を刻み込む。
そうして、私たちは今度こそ、家に帰るために歩き出すのだった。
でも、そのとき。
ぎゅるるるるるっ!
「…………あ」
「………ぷっ」
獣が唸るようなお腹の音に、再び私たちの足は止まった。
私のお腹の中に虎がいるようだ。恐ろしい、尊都さんに会う前まではこんなことなかったのに。
美味しいご飯を知ると、もう前のもやし活には戻れないね。
「まずは、カフェ寄ろっか。行きたかったんだよね?」
「お願いします!!」
迷惑じゃないと言われたばかりの私にもう遠慮の2文字は存在しない。
結局、尊都さんとカフェに上陸して抹茶フラッペ飲んだ。美味しかった。アップルパイも食べた。
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