……とはいえ、だ。
私は静かに小さくため息を吐いた。
これまでひたすらお金やら住む場所やら、私を雇って何でもかんでもしてくれた尊都さんに甘えてきたわけであるが。
校長先生たちは「尊都様」って呼んでたっけ。
「……尊都様、ねえ」
尊都さんはいったい何者なんだろ。
20代前半に見えるけど、彼は大学生なのだろうか。
でもあの早朝の時間帯、大事な講義に行くために起きる時間じゃないし。
……それにそもそも、私は尊都さんの名字を知らない。
学校に来て先生たちに畏れられるほどの地位であるわけだし、お城みたいな家だし。
相当すごい人なんだろうと思うけど。
「飼ってみようと思って、か……」
私にはよくわからないけど、私っていうペットを欲しがるくらいだし、ストレスすごいんだろうなあ。
ペットとして癒してあげたいけど、その方法がわからない。
友達に相談できればあるいは、なにか違ったのかもしれないけど、友達いないし……。
「まあいいか、直接聞けばいいし」
私はそう結論付けて、超早口の世界史の授業に集中することにした。
この世界史の先生はめっちゃ早口だ。そのくせ滑舌がいいから全て聞き取れる。高校時代は放送部だったらしい。
きっと先生なら東京特許許可局も言えるんだろうなと思いながらノートをとる。
ああ……ノートがあるって素晴らしい。教科書に全て書き込まなくても余白がこんなに……。ああ尽きせぬ財力よ。
とまあ、この日は私はずっと物のありがたみを痛感しながら生きていた。



