「……え!?」



「ちょっと待って、あの子の制服……!」




ふふふ……。



ふっふっふ、あーっはっはっはっは!!!



どうだ、ピッカピカだろうこの制服は!



校門を潜ってまもなく。胸を張って歩く私は心の中で自慢を繰り返しまくっていた。



それまでみすぼらしい格好で着てた子がいきなり普通になって来てるんだからびっくりするよね。たのしー!!!



それに、メイドさんたちが頑張ってすぐに用意してくれた品だ。褒められて嬉しくないわけがない。



使用人全員に朝に挨拶回りした中にアイロンがけしてくれた子いたなあ、確か片岡さんだっけ。



帰ったらみんなびっくりしてたって報告しようっと。



決意を胸に、わくわくしながら教室に向かう。



すると。




「……あの。刹菜さん」



「はい?」




廊下の隅で、とある先生に呼ばれた。



邪魔にならないように隅の行き止まりに移動して、話を聞いてみることにする。



…なんの先生だったかな、えーと、図書室司書?だっけ?



ふくよかな見た目とニキビが多い顔から、みんなにはあんまり好かれてなかったっけ。



そういえばこの先生、女子生徒と何かトラブルがどうとかって噂を聞いたような。



まあ噂だし、気にしなくてもいいかなあ…。




「どうかしましたか?」



「その………あの………」




司書先生はもじもじしながら私の様子を伺った。



なんだ?本は借りてなかったはずだけど。



図書室の蔵書整理の手伝いならまあ、別にやってもいいんだけど…なんか違うみたい?




「……刹菜さん、パパ活とかしてます?」



「………ぱぱかつ?」



「急に制服新しくなったからそうなんじゃないかって。それでもしよかったら、十万払うから僕と………その…」




先生はまたもじもじし出した。トイレにでも行きたいのかもしれない。行けばいいのに。



いやそれにしても、ぱぱかつってなんの話だ?



制服新しくするのが「ぱぱかつ」なのかな。それともこれって一般常識?



困ったな。バイトばっかで友達いない上にスマホなんて持ってないし、テレビも新聞も見てないから世間知らずすぎるな。




「あのすみません先生、ぱぱかつ?ってよくわかんないんですけど、この制服貰い物なんで、たぶん違うと思います」



「えっ」



「ところで十万払うってどういうことですか?バイトの提案ならもう大丈夫なんですけど…」




それにしてもバイトで十万円っておかしくないか。



怪しいバイトは手を出さないのが私のポリシーだ。いくら先生でもこれは怪しい。



今まで何個もバイトを経験してきた私ならわかる。いい話など存在しないのだ。



だからそう返答すると、先生はいきなり焦り出した。




「あっ、あっ、そ、そうなんだね、ごめん!勘違いしちゃって、その、パパ活っていうのは、気にしないで!」



「わかりました!じゃあ私はこれで失礼します!」



「ああ、うん……」




この慌てよう、やっぱり怪しい話だったか。



こういうときはさっさと撤退するのが一番。



ということで、私は一礼してすぐに先生から離れた。



…パパ活ってほんとになんだ…?まあいいか。



そんなこんなで教室に到着すると、やっぱりみんな私を見てびっくりしている。



ふふふふふ…!そうそうおどろけ!このシワのなさを!!



しわっしわの汚れた制服とは大違いなんだ!ああ素敵、アイロンの魔力!



と、また私は心の中で大笑いを始めるのであった。