「蓮ー?早く起きないと遅刻するよー?」

 私、夢咲(ゆめさき)ひより。最近、高校一年生になりました。

 今日は、週末明けの登校日。

 いつも通り、朝に弱い幼なじみのことを起こし、一緒に高校に向かうはずが………。

 こいつ、ぜんっぜん起きない………!

 幼稚園からの腐れ縁である風見蓮(かざみれん)は、物凄く朝に弱い。

 もしかしたら、私が起こさなければ一生起きないかもしれない、と思えるほどに。

 もう先行っちゃおうかな………とすら思ったとき、蓮はやっと動き始めた。

「蓮!早く支度して!学校行くよ!」

「おやすみ〜………」

 再び寝ようとする蓮を布団から引きずり出し、強制的に支度をさせる。

「ほらこれ、お弁当!いつもの入れといたから」

 蓮はウトウトしながらも支度を済ませ、玄関を出る。

 朝食は、いつも学校に行く途中で食べている。

 そのせいで、私の鞄には蓮専用の食パン一袋が常備されている。

 そんなに家から学校まで遠くないけど、到着は少し遅めになってしまう。

 まぁ、そのぐらいに学校に来てる人も多いけどね。

 だからこそ、困るんだよなぁ………。

 人が多いということは。

「あ、あのっ、蓮…先輩!」

 “王子様”と呼ばれるこいつの告白ラッシュと言う訳で。

「その、えと……ず、ずっと、好きです!」

 この人たらし。告白してきた子たちがこいつの家での姿を見たら何と言うことやら。

「伝えてくれてありがと。恋人にはなれないけれど、困ったときはいつでも頼ってね」

 けど、それを見せないから余計タチが悪い。

 告白してきた子は悲しそうに目を伏せる。

「蓮先輩って、彼女とかいるんですか……………?」

 そろそろ立ち去るべきか。

 普通、自分の告白を部外者に聞かれたら嫌だよね。………いや、聞いちゃったけどさ。

「いるよ」

 え。………マジ⁉

 去ろうとした体に電撃が走った。

 え、私、今まで人様の彼氏の世話してたんですけど!?

 彼女さんに殺される………!

 ご、ごめんなさいぃいいいぃ………。

 どこかの彼女さんに心の中で必死に謝罪する。

 あぁ………聞くんじゃなかったよ〜………。

 その瞬間、いい加減去ろうとした体が蓮の方へと引き寄せられる。



「これ、俺の彼女」



 私はまるで時が止まったかのように、しばらくフリーズする。

 告白した子が去った後、時間が動き出したとともに。

「はぁああぁあぁああぁあぁぁあーーー⁉」