「Aの“南の階段をのぼった先”……かな?」

 菜々美がそう答えると、目の前の空中に浮かんでいた羽が、ふわっと消えた。
 つづけて、どこからともなく風がふき、ホールの右手の階段に、金色の光が差しこんだ。

 「正解よ! やっぱりあなた、ただの子じゃないわ!」

 プリンセスがうれしそうに手をたたく。

 「でも、ここからが本番よ。このお城の中には、あと三つのクイズの間があるの。
 ぜんぶとけたら、宝石のある部屋にたどり着けるはず」

 菜々美はこくんとうなずき、プリンセスの後について階段をのぼっていった。
 階段の先は、ふしぎな形をした回廊だった。
 雲でできた床はぷかぷかと揺れていて、外の景色がすけて見える。

 (足がすくみそう……でも、行かなきゃ)

 第一の部屋、「風の間」に入ると、壁にこんな言葉が書かれていた。

 《第2問》
 つぎのうち、「いちばん風が強くふくとき」はどれ?
 A. 朝ごはんのあと
 B. 正午ちょうど
 C. 午後3時ごろ

 「これは……天気のことだ!」

 菜々美は小さくつぶやき、プリンセスの顔を見た。
 すると、プリンセスはにっこりして言った。

 「答えをまちがえても、部屋がもとにもどるだけ。くやしくても、やりなおせるの」

 その言葉を聞いたとき、菜々美の中に少し勇気がわいた。
 そして、指をさした。

 「C、午後3時ごろ!」

 ぴぴっ、と音がして、壁の文字がひとりでに光りながら消えていく。
 その瞬間、部屋の向こう側の壁がすーっと開いた。

 「よしっ!」

 二人はつぎの部屋へと足を進めた。

 ***

 二つ目の部屋は、「羽の間」。
 天井からたくさんのカラフルな羽がふわふわと舞いおりている。
 その中央に、音符の形をした光のパネルが浮かんでいた。

 《第3問》
 「風のうた」に出てくるどうぶつはどれ?
 A. 小鳥
 B. うさぎ
 C. かめ

 「これはちょっとむずかしいね……」と菜々美がつぶやくと、プリンセスは顔をかしげた。

 「そうだ、ヒントがあるかもしれない! この羽の色を見て!」

 よく見ると、赤い羽には“ピヨピヨ”、青い羽には“ピョンピョン”、緑の羽には“ノロノロ”と文字が書かれていた。

 「これって……鳴き声?」

 「ちがう、動き方だよ! 小鳥はピヨピヨ、うさぎはピョンピョン、かめはノロノロ!」

 菜々美ははっと気づいた。

 「正解は……Aの小鳥!」

 すると、パネルが明るく光って、羽の間じゅうがきらきらと光りはじめた。
 まるで拍手のように、風がふいてきた。

 「あと一つのクイズ部屋をこえたら、“宝石の間”にたどりつけるわ」

 菜々美は大きくうなずいた。ドキドキはしていたけれど、不思議と怖くはなかった。

 (大丈夫。わたしは、プリンセスを助けにきたんだ)