わたしは、レンゲが猫じゃないことを知っている。
レンゲっていうのは、わたしが飼っている猫の名前だ。
いつもは「くるるるる」ってヘンな鳴き声をあげて、棚にかくしてある自分のおやつをほしがるただの猫なんだけど。
わたし、見たんだ。
昨日の満月、レンゲが家に入ろうとしていたドロボウをやっつけてくれていたのを。
しかも、人間のすがたに変身して!
■
「夢だったのかなあ……」
わたしは、幼なじみのヤクモの家で、ゲームをしながらいった。
ベッドに座っているヤクモが、隣でコントローラーを振り回しているわたしを見おろした。
「どうかしたの」
「うちのレンゲが……」
いや、信じてくれるのかな。
うちの猫が、人間に変身するところを見ちゃった、なんて。
「チカナ。いいかけて、やめないでよ。おれが、そういうの気になるタイプなの知ってるだろ」
「ごめん、知ってる」
「じゃあ、早くいってくださーい」
急に敬語になって、プレッシャーをかけてくるヤクモ。
「もー、おどしじゃん。いや、うちのレンゲがさ」
「うん」
「昨日の夜、人間になってて」
「夢の話か?」
「いや、まじ!」
「……ふうん」
なんだか意味ありげな笑みを浮かべる、ヤクモ。
かんぜんに、信じてないよね。
しかし、ヤクモは意外にも「そうなんだ」と納得したように、うなずいた。
「レンゲが人間になって、驚いた?」
「え……まあ、驚いたけど」
「こわいとか、思わないのか?」
「そんなこと思わないよ。むしろ、嬉しいかな。レンゲとお話できるかも~なんて思って」
「そうだな。おれも、シロツメと話してみたいと思うかな、同じだ」
シロツメは、ヤクモの家が飼っている、シバイヌだ。
いつも玄関前で、ひなたぼっこをしている、のんびり屋。
「レンゲ、しゃべったのか?」
「それがね、朝からレンゲに話しかけたりしてるんだけど、しゃべってくれなくて……いや、ほんとに夢じゃないよ!」
「信じてるよ。それよりさ、レンゲって、メインクーンだったよな」
「う、うん」
メインクーンっていうのは、猫の種類のこと。
レンゲは、体長約一メートルもある、大きな猫なんだ。
猫のなかでは、超おっきいよね。
だから、人間のすがたになってたのを見たときも、身長がすごく大きかった。
自動販売機より、少し低いくらいだったかな。
「人間になったレンゲは、かなり大きいし、目立つと思う。レンゲが人間になれる猫だってことは、みんなにバレないようにしないといけないんじゃないか。バレたら、面倒なことに……」
「人間になれる動物なんて、いないもんね。アイドルみたいな人気が出ちゃうかもしれないよね。大丈夫。レンゲのことは、ぜったいに、わたしが守るよ! パパラッチになんて負けないよ!」
「――ま、まあ。そうだな。とにかく、できる範囲でおれも協力するよ」
「ほんと? ありがとう、ヤクモ!」
「とりあえずさ」
持っていたコントローラーを置いて、ヤクモはまっすぐに、わたしを見つめた。
「今夜、起きてろよ。またレンゲが人間になるところを、見られるかもしれないぞ」
レンゲっていうのは、わたしが飼っている猫の名前だ。
いつもは「くるるるる」ってヘンな鳴き声をあげて、棚にかくしてある自分のおやつをほしがるただの猫なんだけど。
わたし、見たんだ。
昨日の満月、レンゲが家に入ろうとしていたドロボウをやっつけてくれていたのを。
しかも、人間のすがたに変身して!
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「夢だったのかなあ……」
わたしは、幼なじみのヤクモの家で、ゲームをしながらいった。
ベッドに座っているヤクモが、隣でコントローラーを振り回しているわたしを見おろした。
「どうかしたの」
「うちのレンゲが……」
いや、信じてくれるのかな。
うちの猫が、人間に変身するところを見ちゃった、なんて。
「チカナ。いいかけて、やめないでよ。おれが、そういうの気になるタイプなの知ってるだろ」
「ごめん、知ってる」
「じゃあ、早くいってくださーい」
急に敬語になって、プレッシャーをかけてくるヤクモ。
「もー、おどしじゃん。いや、うちのレンゲがさ」
「うん」
「昨日の夜、人間になってて」
「夢の話か?」
「いや、まじ!」
「……ふうん」
なんだか意味ありげな笑みを浮かべる、ヤクモ。
かんぜんに、信じてないよね。
しかし、ヤクモは意外にも「そうなんだ」と納得したように、うなずいた。
「レンゲが人間になって、驚いた?」
「え……まあ、驚いたけど」
「こわいとか、思わないのか?」
「そんなこと思わないよ。むしろ、嬉しいかな。レンゲとお話できるかも~なんて思って」
「そうだな。おれも、シロツメと話してみたいと思うかな、同じだ」
シロツメは、ヤクモの家が飼っている、シバイヌだ。
いつも玄関前で、ひなたぼっこをしている、のんびり屋。
「レンゲ、しゃべったのか?」
「それがね、朝からレンゲに話しかけたりしてるんだけど、しゃべってくれなくて……いや、ほんとに夢じゃないよ!」
「信じてるよ。それよりさ、レンゲって、メインクーンだったよな」
「う、うん」
メインクーンっていうのは、猫の種類のこと。
レンゲは、体長約一メートルもある、大きな猫なんだ。
猫のなかでは、超おっきいよね。
だから、人間のすがたになってたのを見たときも、身長がすごく大きかった。
自動販売機より、少し低いくらいだったかな。
「人間になったレンゲは、かなり大きいし、目立つと思う。レンゲが人間になれる猫だってことは、みんなにバレないようにしないといけないんじゃないか。バレたら、面倒なことに……」
「人間になれる動物なんて、いないもんね。アイドルみたいな人気が出ちゃうかもしれないよね。大丈夫。レンゲのことは、ぜったいに、わたしが守るよ! パパラッチになんて負けないよ!」
「――ま、まあ。そうだな。とにかく、できる範囲でおれも協力するよ」
「ほんと? ありがとう、ヤクモ!」
「とりあえずさ」
持っていたコントローラーを置いて、ヤクモはまっすぐに、わたしを見つめた。
「今夜、起きてろよ。またレンゲが人間になるところを、見られるかもしれないぞ」