執着心がないはずの危険な男は少女を甘く囲い込む。

どう考えても、私のことを信じていない。

手が震える。心臓もうるさい。顔もこわばる。

怖いに決まっている。

でも、こういう時は動揺を悟られれば、さらに悪い状況になる。

そういうシーンを本で何度も読んだことがある。





「本当に私にキスしたいならどうぞ。本当にそう思っているなら」





目は逸らさない。

動揺を悟らせない。

すると……その男は私の腕を掴んでいた手を離して起き上がった。

「ははっ」

楽しそうに笑っているが、ここは私の勝利だろう。

やっぱり本から学んだことは役に立つ。