執着心がないはずの危険な男は少女を甘く囲い込む。

「まず意味がわからない。話の根本が伝わらない。私がこの店を見つけたのは偶然。新しい本屋かと思ったの」


冷静を装いながら言葉を(つむ)いでも、心臓の音は耳に手を当てなくても分かるほどドクドクと鳴り響いている。


「へぇ、割と冷静じゃん。もっとビビリかと思った。で、その話は本当?」


どう考えても疑われている。

それでも事実であることは変わらない。

私は鳴り響く心臓を押さえ込むように……自分に言い聞かせるように少年と目を合わせた。





「本当。偶然この店を見つけた」




「…………。分かった、信じるよ」





そう言いながらも青年は私を押し倒したまま動かない。

そして、そのまま私の頬に手を当てた。



「ちょっと……!」



「この体勢で何もしないとかありえないでしょ」



そんな言葉を言いながらも、目の前の男の顔は冷たいままだった。