執着心がないはずの危険な男は少女を甘く囲い込む。

「紗都」

私の名を呼んで、その男が一歩、また一歩と近づいてくる。



「なんで俺が執着していると思う?」



「昨日言ってたでしょ。私の膝の上で寝れたのが珍しかったって」



「違う」



柊斗が私の髪に触れた。

雨に濡れて顔に引っ付いている髪を(すく)うように持ち上げる。

「紗都、俺のこと怖い?」

「……怖い時もあるけれど、いつも怖いわけじゃない」

「そういうとこ。それと……」

柊斗が私の濡れた髪にキスを落とす。

訳がわからないのに、勝手に顔に熱が集まっていく。






「強がっているのに、顔だけ真っ赤になるところも好物。昨日も顔が赤くなっていたの気づいていた?」






知らない。

だって自分の顔なんて鏡でもないと分かるはずない。

本の匂いと濡れた雨の匂いが混じるような空間。