執着心がないはずの危険な男は少女を甘く囲い込む。

「何してんの?」


(ビクッ……)


その声で頭は振り返りたくないと思っているのに、反射的に振り返ってしまう。



「紗都がいるから高校に来てやったのに。放課後まで会えないとか焦らしてんの?」



自分が私を見つけられなかったくせになんという傲慢(ごうまん)な言い方。

私と隣を歩きながら校舎を出ようとする男の手元に傘は握られていない。



「傘……忘れたの?」



「何。紗都の傘に入れてくれるって意味?」



「違う。私は折り畳みも持っているから貸してあげるって意味」

「……へー。甘いね」

「え?」

柊斗が私に顔を近づけて、視界が柊斗の顔でいっぱいになる。

雨音だけが耳に響いたままだった。