執着心がないはずの危険な男は少女を甘く囲い込む。

翌日もあの出来事が夢かと思ってしまうような感覚から抜け出せない。

「……木、白木」

名前を呼ばれて、顔を上げた教室。

呆れた顔でため息をつく教師。

「また本を読んでいたのか。授業中は先生の話を聞きなさい」

「……すみません」

「まぁ、授業に参加してくれるだけマシだがな」

そう言った先生の視線は窓の外。

校門をちょうど潜った様子の柊斗が歩いている。

クラスは違うのに柊斗のうわさを知らない同学年はいない。

注目しようと思えばすぐに顔も名前も分かったはずなのに、昨日まで認識していなかった。