魔法使い時々王子

「ここよね?」

ローズは宿屋の小窓からそっと中を覗き込んだ。

「……明らかに不審者になってるぞ。」

ダリウスは苦笑しながら小声で言う。

「さ、入ろう。」

二人は何食わぬ顔で宿屋の中へ入った。

辺りを見渡すと、ロビーのソファには四人の男が腰掛けている。

身なりからして、彼らがイスタリア王国の使者であることは一目で分かった。

ローズとダリウスは、四人の少し後ろにあるソファへ腰を下ろす。

宿屋の主人が水を運んでくる中、二人はさりげなく耳を傾けた。

「まったく……国王陛下はどうして突然、会談を中止されたんだ。」

一人の男が深いため息をつく。

「せっかく、はるばるミロまで来たというのに。」

「分からん。」

別の男が腕を組んだ。

「ただ、『本日の会談は中止せよ』との伝令が届いただけだ。何かあったのかもしれん。」

「それじゃあ、もう帰国するのか?ここに滞在していても時間の無駄ではないか。」

すると、一番年配らしい男が静かに首を振った。

「いや。今、大臣に確認を取らせている。」

「また突然『会談を再開する』と言われたら、それこそ無駄足だからな。」

どうやら使者たちも、詳しい事情は聞かされていないようだった。

そこまで聞いたところで、ダリウスはローズの肩を軽く叩いた。

「……これ以上ここにいても、新しい話は聞けそうにない。」

ローズも小さく頷く。

「一度、王宮へ戻ろう。」

二人は使者たちに気づかれないよう静かに立ち上がり、そのまま宿屋を後にした。