魔法使い時々王子

シドが部屋に入ると、ルイは執務机の前を何度も行ったり来たりしていた。

普段は冷静なルイらしくない様子だった。

「お呼びでしょうか、陛下。」

「ああ。」

ルイは足を止めると、ソファを指した。

「掛けてくれ。」

シドは言われるまま腰を下ろした。

ルイも向かいに座るが、その表情には焦りが滲んでいた。

「父上が、我々の動きに探りを入れているようだ。」

シドは息を呑む。

「内容までは知られていない。だが……こちらが何かを企てていることには勘付かれたらしい。」

ルイは落ち着かない様子で両手を組んだ。

「そのせいか、今日ミロ王国と行われる予定だった会談も、急遽中止になったようだ。」

「……そうでしたか。」


ルイは深く息を吐くと、椅子の背にもたれ、目元を手で押さえた。

「それだけじゃない。」

そう言って、一通の手紙をシドへ差し出す。

「ジルからだ。」

シドは手紙を受け取り、目を通した。

「アスタリトの国王は、今回の計画に反対しているようだ。」

その一文を聞いた瞬間、シドの心臓がどくんと大きく脈打った。

父上が……。

計画は、アスタリトにも知られてしまったのか。

しかし、続きを読んだシドはゆっくりと息を吐いた。

『必ず説得する。だから予定通り計画を進めてほしい。』

そう書かれていた。

さらに、その下にはもう一つ。

『今後はエミリーをシドのもとへ置く。アスタリトからの連絡は、すべてエミリーを通して伝える。』

「……エミリー?」

シドは思わず呟いた。

その名前を口にした、ちょうどその時――。

コンコン。

部屋の扉が静かにノックされた。

ルイとシドは同時に顔を上げた。