魔法使い時々王子

アリスが図書室を後にすると、静けさが戻った。

リトは開いていた本に目を落としたまま、ページをめくる手を止める。

「……母上だろ?」

その一言に、ノエルは静かにリトへ視線を向けた。

「また、お抱えの用心棒たちにあちこち嗅ぎ回らせてるんだろ。」

ノエルは少しだけ目を細めると、いつもの柔らかな笑みを浮かべた。

「さぁ、何のことでしょう。」

「とぼけるな。」

リトは呆れたように息をつく。

「母上は協力してくれるってことか?」

ノエルは少しだけ表情を和らげた。

「王妃様は、いつでもリト様のお味方です。」

その言葉は穏やかだったが、どこか力強さも感じさせた。

「何かあれば、きっと力を貸してくださいます。」

リトはしばらく黙っていた。

やがて、小さくため息をつく。

本を閉じると、椅子から立ち上がった。

「二人が戻ったら知らせてくれ。」

「かしこまりました。」

ノエルは一礼する。

リトはそれ以上何も言わず、静かに図書室を後にした。

一人残ったノエルは、窓の外へ視線を向ける。

夕暮れの空を見つめながら、小さく呟いた。

「どうか、間に合いますように……。」


その頃――。
イスタリア王国では、シドがルイに呼び出されていた。