魔法使い時々王子

慌ただしく部屋を飛び出していく二人を見送ったあと、リトはじっとノエルを見つめた。

ノエルはその視線に気づくと、ゆっくりとリトへ顔を向ける。

そして、何事もないようににっこりと微笑んだ。

その笑顔を見たリトは、小さくため息をついた。

「私、部屋に戻るわね。」

アリスは、小さく口を開く。

「シドに手紙を書くわ。二人が戻ったら教えてちょうだい。」

「分かりました。」

ノエルが静かに頷いた。

アリスは図書室を後にし、自室へと戻った。

机の引き出しを開けると、大切にしまっていたシドからの紙鳥を取り出す。

紙をそっと開き、ペンを走らせた。

セオに計画を打ち明けようとしていた矢先、両国の会談が急遽中止になったこと。

使者はすでにミロへ到着していたにもかかわらず、理由も分からぬまま予定が変更されたこと。

そして――。

『そちらでも何か動きはありませんか。』

最後にそう書き添えると、アリスは紙を丁寧に折り畳んだ。

ふっと魔力が宿った。

紙はぶるっと小さく震え、みるみる鳥の形へと姿を変えた。

アリスが窓を開けると、紙鳥は本物の鳥のように羽ばたき、夕暮れの空へ飛び立っていった。

その姿が小さくなるまで見送ると、アリスは静かに息を吐いた。

「……一体、何が起きているの。」

誰に聞かせるでもない呟きは、夕暮れの風に溶けて消えていった。

アリスは窓辺に立ったまま、どこまでも続く空をぼんやりと見つめていた。