魔法使い時々王子

しばらくして、ノエルが図書室――ではなく、お茶会の会場へと戻ってきた。

アリスはすぐに立ち上がる。

「ノエル、どうだった?」

ノエルは周囲に聞こえないよう声を潜めた。

「会談は、急遽中止になったようです。」

「中止?」

アリスとリトは同時に聞き返した。

「詳しいことまでは分かりませんでしたが、今朝、イスタリアの使者から急に連絡が入ったそうです。」

アリスとリトは顔を見合わせた。

「そう……。」

アリスは小さく呟いた。

「また日を改めるのかしら……。」

その時だった。

「セオ様!」

会場の入口から慌ただしい声が響いた。

セオの側近であるウィルが、息を切らしながら部屋へ入ってくる。

何事かをセオの耳元で告げると、セオの表情が一瞬だけ引き締まった。

「分かった。」

短く頷いたセオは、エレオノーラのもとへ歩み寄り、何か一言断りを入れる。

エレオノーラも事情を察したように静かに頷いた。

そして、セオとウィルは足早に部屋を後にした。

その姿を見送りながら、リトがぽつりと呟く。

「……イスタリアの件だろうな。」

アリスは返事をしなかった。

胸の奥で、嫌な予感だけが静かに膨らんでいった。