魔法使い時々王子

リトはちらりとアリスを見上げた。

アリスは一瞬、すべてを話そうか迷った。

だが――。

今ではない。

そう思った。

「ううん、何でもないわ。」
アリスは慌てて笑顔を作った。

「セオも来られて良かったわ。」
セオは穏やかに微笑んだ。

「ああ。今日は体調が良くてね。」
そう言うと、会場の奥にいるエレオノーラへ視線を向けた。

「じゃあ、お祝いを言ってくるよ。」
「ええ。」

セオは軽く手を振ると、その場を後にした。

その背中が見えなくなると、リトが小さくため息をついた。
「……セオに話さないのか?」

アリスは紅茶のカップを見つめた。

「もちろん話すわ。」
そして、小さく微笑んだ。

「でも、もっと静かな場所でね。」

お茶会は和やかに進んでいった。

招待客たちは談笑し、笑い声があちこちから聞こえてくる。

しかし、アリスだけは落ち着かなかった。

何度も何度も、部屋に置かれた時計に目が向く。

ノエルはまだ戻ってこない。

ローズとダリウスはどうしているのだろう。

会談は、本当に行われているのだろうか。

「……セオには今日話すのか?」
隣でリトが小声で問いかけた。

アリスは頷いた。
「ええ。夕食の後でね。」

「そうか。」
リトは短く答えた。

「なら、会談のことも今後はセオに聞ける。」
アリスは少しだけ視線を落とした。

「そうね……。」
だが、すぐに首を横に振った。

「でも、セオを心配させたくないのよ。」
アリスは窓の外を見た。

「隠し部屋から聞けたら、セオに聞かなくても早く知れるわ。」

その言葉に、リトは何か言いたげな顔をした。

けれど、結局何も言わなかった。

ただ静かに、アリスと同じように時計へ視線を向けた。