静かな夜だった。
シドは王宮の書庫で、一通の手紙を静かに読み返していた。
差出人はアリス。
封を開けた時から自然と口元が緩んでいたが、ある一文を目にした瞬間、思わず声が漏れる。
「……え?」
もう一度、その行を読み返す。
そこには、街で開かれた仮面舞踏会へ参加したことが書かれていた。
「仮面舞踏会……?」
シドは思わず苦笑した。
まさかアリスが、王宮を出てそんな場所へ足を運ぶとは思ってもみなかった。
少しだけ心配になる。
けれど、読み進めるうちに、その気持ちは次第に安堵へと変わっていった。
手紙には、初めて見る街並みのこと。
公式ではない舞踏会の賑わい。
仮面をつけ、誰にも正体を知られずに過ごした束の間の時間。
そして――とても楽しかったこと。
その一つ一つが、どこか弾んだ文字で綴られていた。
「……そうか」
シドは小さく微笑む。
王太子妃という立場に縛られてきたアリスが、ほんの少しでも心から笑えたのなら。
それでいい。
シドは机に向かい、返事を書くために筆を取った。
ルイ王子が説得を続けてくれていること。
しかし、その甲斐もなく王はなお星晶の計画を進めようとしていること。
そろそろ行動に移す時期を考えなければならないこと。
けれど今は、建国記念日の式典を控え、王宮中が慌ただしい日々を送っていること。
そこまで書き進めると、シドは少しだけ筆を止めた。
そして、静かに最後の一文を書き添える。
――君の気持ちが決まったら、教えてほしい。
書き終えたシドは、その一文をじっと見つめた。
「……いや」
小さく呟き、ため息をつく。
これでは、返事を急かしているように思われるかもしれない。
あの夜、自分は「ゆっくり考えてほしい」と言ったはずなのに。
シドは筆を置き、窓の外に広がる静かな夜空を見上げた。
シドは王宮の書庫で、一通の手紙を静かに読み返していた。
差出人はアリス。
封を開けた時から自然と口元が緩んでいたが、ある一文を目にした瞬間、思わず声が漏れる。
「……え?」
もう一度、その行を読み返す。
そこには、街で開かれた仮面舞踏会へ参加したことが書かれていた。
「仮面舞踏会……?」
シドは思わず苦笑した。
まさかアリスが、王宮を出てそんな場所へ足を運ぶとは思ってもみなかった。
少しだけ心配になる。
けれど、読み進めるうちに、その気持ちは次第に安堵へと変わっていった。
手紙には、初めて見る街並みのこと。
公式ではない舞踏会の賑わい。
仮面をつけ、誰にも正体を知られずに過ごした束の間の時間。
そして――とても楽しかったこと。
その一つ一つが、どこか弾んだ文字で綴られていた。
「……そうか」
シドは小さく微笑む。
王太子妃という立場に縛られてきたアリスが、ほんの少しでも心から笑えたのなら。
それでいい。
シドは机に向かい、返事を書くために筆を取った。
ルイ王子が説得を続けてくれていること。
しかし、その甲斐もなく王はなお星晶の計画を進めようとしていること。
そろそろ行動に移す時期を考えなければならないこと。
けれど今は、建国記念日の式典を控え、王宮中が慌ただしい日々を送っていること。
そこまで書き進めると、シドは少しだけ筆を止めた。
そして、静かに最後の一文を書き添える。
――君の気持ちが決まったら、教えてほしい。
書き終えたシドは、その一文をじっと見つめた。
「……いや」
小さく呟き、ため息をつく。
これでは、返事を急かしているように思われるかもしれない。
あの夜、自分は「ゆっくり考えてほしい」と言ったはずなのに。
シドは筆を置き、窓の外に広がる静かな夜空を見上げた。



