魔法使い時々王子

セオは腕を組んだまま、しばらく考えるように天井を見上げた。

そして、ふっと小さく笑う。

「最近よく耳にするよ、仮面舞踏会」

「え……?」

アリスは思わず顔を上げた。

「王宮でも開催してほしい、なんて声が上がっているくらいだ」

セオはそう言って肩をすくめる。

「確かに公式の舞踏会ではないけれど……」

そこで一度言葉を切り、アリスをまっすぐ見つめた。

「君にも少しくらい息抜きは必要だよ。楽しんでおいで」

優しい微笑みとともに告げられた言葉に、アリスは目を見開く。

反対されると思っていた。

だからこそ、その許しが思いがけなく胸に染みる。

アリスは胸の前でそっと手を握りしめた。

「……ありがとう、セオ」

その声は自然と柔らかくなっていた。

セオはそんなアリスを見て微笑む。

「ただし、一つだけ条件がある」

「条件?」

「ローズが羽目を外さないように見ていてくれ」

その言葉に、セオは少し困ったように苦笑した。

アリスも思わず笑みをこぼす。

「それは……努力するわ」

「頼んだよ」

穏やかな空気が流れる。

アリスは改めてセオに一礼すると、部屋の扉へ向かった。

そして執務室を後にする。

扉が閉まったあとも、セオの優しい言葉はしばらくアリスの胸の中に残り続けていた。