魔法使い時々王子

アリスは、そっと本を閉じた。

リトはページから目を離さないまま、淡々と言う。

「……ゆっくり考えるんだな。それに、セオがそれを受け入れるかも分からない」

「……そうね」

アリスも、同じことを思っていた。

——もし、この話をセオに伝えたら。

(……なんて言うのかしら)

胸の奥が、わずかにざわつく。

それ以上は考えず、アリスは立ち上がった。

「少し、行ってくるわ」

図書館を後にし、そのままセオのもとへと向かう。

シドとの約束では——
この計画を実行すると決めた後に、セオへ話すことになっている。

(……今はまだ、何も言えない)

そう、自分に言い聞かせる。



「セオ、調子はどう?」

部屋に入ると、セオは机に向かい、書類に目を落としていた。

さらさらとペンを走らせ、署名を終える。

「ああ、大丈夫だよ」

顔を上げ、穏やかに微笑む。

「ちょうどよかった。アリスに話したいことがあったんだ」

そう言って、車椅子をゆっくりと動かし、アリスの前まで来た。

「姉上が、アリスに園遊会を手伝ってほしいと言っていてね」

「園遊会?」

アリスは小さく首を傾げる。

「毎年この時期に開かれる、春の園遊会だ。エレノオーラが仕切っている」

少しだけ楽しげな声音で続ける。

「今年はぜひ、アリスにも運営を手伝ってほしいそうだ」

「私なんかで、力になれるのかしら……?」

不安げに呟くアリスに、セオは優しく頷いた。

「もちろん。姉上も喜ぶ。」

その言葉に、アリスはほんの少しだけ考え——

やがて、静かに頷いた。

「……分かったわ。お手伝いする」