魔法使い時々王子

舞踏会から、数週間が過ぎた。

柔らかな春の光が差し込む窓辺で、アリスは一通の手紙を静かに読んでいた。

——シドからの手紙だった。

そこには、ルイ王子にすべてを伝えたこと。
そして、アリスに時間を与えてほしいと頼んだことが綴られていた。

どれほど順調に事が進んでも、この計画の実行には二、三ヶ月はかかるという。

だから——焦らず、ゆっくり考えてほしいと。

そして最後に。

もし、セオを愛しているのならば——
この話はすべて白紙に戻す。

星晶の件は、両国の国王に委ねる。

そう、はっきりと書かれていた。

アリスは手紙を閉じる。

静かに、深く息を吐いた。

そのまま視線を窓の外へと向ける。

やわらかな春の空。

穏やかな景色とは裏腹に、胸の内は少しも落ち着かなかった。

(……もうすぐ)

イスタリア王国の、建国記念日。

シドの手紙にもあった通り——
その日が終わるまでは、ミロとの交渉が再び動き出すことはないだろう。

ほんのわずかに与えられた、猶予の時間。

「……考えないと」

小さく、呟く。

けれど——

その答えは、まだ見えなかった。