魔法使い時々王子

「……アリス」

シドは膝をついたまま、まっすぐに彼女を見上げた。

仮面はすでに外されている。
その瞳には、迷いはなかった。

「……俺は、アスタリトに戻る」

静かに、はっきりと告げる。

「王子として生きることになる」

その言葉の重みを、自分自身で受け止めるように一度息を吐いた。

「……でも」

ほんのわずかに、声が柔らぐ。

「それでも、アリスを一人にはしない」

アリスの瞳が揺れる。

「どこか知らない土地で、一人で生きるなんて——そんなこと、させない」

強く、言い切った。

そして——

「……俺の国に来てくれないか」

その言葉は、静かだったが、確かな力を持っていた。

「アスタリトで、俺の隣にいて欲しい」

一瞬の静寂。

まるで時間が止まったかのように、空気が動かない。

シドは、視線を逸らさずに続けた。

「……これは、取引でも命令でもない」

「——俺の意思だ」

わずかに間を置き、

「……アリスと、共に生きたい」

その言葉が、静かな塔の中に落ちた。