魔法使い時々王子

その頃——

王宮の一室で、ロザリアは一通の書簡に目を通していた。

「……今年も来たのね」

差出人は、ミロ王国。

毎年恒例の、仮装舞踏会への招待状だった。

ここ数年、ロザリアは欠席を続けていた。

だが——

「今年は、出ましょうか」

静かにそう呟く。

そして視線を上げた。

「シド、あなたも来なさい」

不意に名を呼ばれ、シドはわずかに目を見開いた。

「俺も、ですか?」

「ええ」

ロザリアは淡く微笑む。

「たまには、外の空気も悪くないわ」

その言葉の裏を読むように、シドは一瞬だけ沈黙した。

ミロ王国。

そこには——アリスがいる。

「…会えるのかは、分からないわよ。」

その一言は、期待を抑えるためのものだったのか。

シドは何も言わず、ただ静かに頷いた。

⸻

そして——

ミロ王国、王宮。

仮装舞踏会の招待客リストを前に、セオは目を落としていた。

隣には側近のウィル。

ウィルはリストの一箇所に指を置いた。

ロザリアの名。

そして——その同行者の欄。

「恐らく……彼かと」

セオは何も言わない。

ただ静かに、その名を見つめていた。

仮装の夜——それぞれの思惑が、静かに交差しようとしていた。