ノエルに案内され、アリスとリトは王宮の地下へと降りてきていた。
石造りの廊下はひんやりと冷たく、灯りも少ない。
「こんなところに記録係が?」
アリスが小声で言うと、リトも辺りを見回した。
ノエルは振り返り、柔らかく微笑む。
「重要な記録ほど、静かで安全な場所に保管されるものです」
やがて一つの扉の前で立ち止まり、ノエルが軽くノックした。
中に入ると——
そこには、本の山に埋もれるようにして座る一人の女性がいた。
背中は少し丸まり、長い銀髪をゆるく結っている。
分厚い本をめくる手だけが、静かに動いていた。
「おや、珍しい人が来たもんだえ」
女性は顔も上げずに言う。
だが次の瞬間、ゆっくりと視線を上げた。
ぎょろりとした鋭い瞳が、まっすぐノエルを捉える。
「お久しぶりです、マルグリットさん」
ノエルが穏やかに挨拶する。
マルグリットの視線は次に、リトとアリスへと向けられた。
その目は、まるで人の中身まで覗くようだった。
「これはこれは……王子に王太子妃様まで。一体、何のご用だえ?」
リトは一歩前に出る。
「今日、イスタリアの使者が来る予定だったよな?でも来なかった。予定が変わったのか?」
ノエルが続ける。
「もしご存じでしたら、教えていただけますか」
マルグリットは三人をじっと見つめた。
その視線は長く、重い。
だが何も聞き返すことなく、手元の分厚い帳簿をめくり始める。
ぱら、ぱら、と紙の音だけが地下に響く。
やがて指があるページで止まった。
「ああ、ああ……その予定は変更されたえ」
マルグリットは鼻で息を鳴らした。
「変更を希望したのは、ミロの方だえ」
アリスとリトは顔を見合わせる。
マルグリットは続けた。
「次いつ会合の機会を設けるかは、まだ決まってないんだえ。ミロは“もう話は済んだ”と、何度も書簡を送っているようだえ。だがイスタリアは、それと真逆のことを主張してるんだえ」
マルグリットは本をぱたんと閉じた。
「まったく……話は平行線だがえ」
石造りの廊下はひんやりと冷たく、灯りも少ない。
「こんなところに記録係が?」
アリスが小声で言うと、リトも辺りを見回した。
ノエルは振り返り、柔らかく微笑む。
「重要な記録ほど、静かで安全な場所に保管されるものです」
やがて一つの扉の前で立ち止まり、ノエルが軽くノックした。
中に入ると——
そこには、本の山に埋もれるようにして座る一人の女性がいた。
背中は少し丸まり、長い銀髪をゆるく結っている。
分厚い本をめくる手だけが、静かに動いていた。
「おや、珍しい人が来たもんだえ」
女性は顔も上げずに言う。
だが次の瞬間、ゆっくりと視線を上げた。
ぎょろりとした鋭い瞳が、まっすぐノエルを捉える。
「お久しぶりです、マルグリットさん」
ノエルが穏やかに挨拶する。
マルグリットの視線は次に、リトとアリスへと向けられた。
その目は、まるで人の中身まで覗くようだった。
「これはこれは……王子に王太子妃様まで。一体、何のご用だえ?」
リトは一歩前に出る。
「今日、イスタリアの使者が来る予定だったよな?でも来なかった。予定が変わったのか?」
ノエルが続ける。
「もしご存じでしたら、教えていただけますか」
マルグリットは三人をじっと見つめた。
その視線は長く、重い。
だが何も聞き返すことなく、手元の分厚い帳簿をめくり始める。
ぱら、ぱら、と紙の音だけが地下に響く。
やがて指があるページで止まった。
「ああ、ああ……その予定は変更されたえ」
マルグリットは鼻で息を鳴らした。
「変更を希望したのは、ミロの方だえ」
アリスとリトは顔を見合わせる。
マルグリットは続けた。
「次いつ会合の機会を設けるかは、まだ決まってないんだえ。ミロは“もう話は済んだ”と、何度も書簡を送っているようだえ。だがイスタリアは、それと真逆のことを主張してるんだえ」
マルグリットは本をぱたんと閉じた。
「まったく……話は平行線だがえ」



