魔法使い時々王子

しばらくして、ノエルが数冊の資料を抱えて戻ってきた。

「こちらが閲覧可能な範囲のまとめです」

机の上に静かに並べられる。

リトとアリスは並んで資料を開いた。

古い記録、過去の使用例、封印の歴史。

ページをめくるたび、空気が重くなる。

星晶は祝福であり、同時に災厄でもあった。

暴走した記録。
国を一夜で滅ぼしかけた事例。
封印という選択が何度も取られてきた事実。

調べれば調べるほど、はっきりする。

――手を出してはいけない力だ。

「……やっぱり」

アリスが小さく呟く。

「これを望むなんて……」

言葉の先は飲み込んだ。

リトも静かに本を閉じる。

「ミロからの使者は、次はいつ来るだろう?」

その問いは、独り言のようだった。

だが。

「ミロからの使者であれば、明日来国予定になっていますよ」

穏やかな声が、即座に返す。

アリスとリトは同時に顔を上げた。

ノエルは変わらぬ微笑みを浮かべている。

「……どうしてそれを?」

アリスが思わず尋ねる。

「図書館には、各国の書簡や公式記録も届きますので。予定は把握しております」

あまりに自然な説明。

だが、その情報の速さは異様だった。

アリスとリトは顔を見合わせる。

静かな頷き。

――何か聞き出さなければ。

――そして、シドに伝えなければ。

ノエルはそんな二人を、少し離れた場所から見守っている。