魔法使い時々王子

アリスは星祈祭の感想を手紙に綴った。

美しかったこと。
人々が心から祈っていたこと。

そして――

魔力を持たない自分でさえ、星晶から得体の知れない力を感じたこと。

『間違った使い方をすれば、きっと恐ろしいことになります』

最後にそう記し、封をした。

密やかに、イスタリアへと送られる。

――イスタリア王宮。

シドは、アリスの温室でその手紙を読んでいた。

硝子越しに差し込む陽光が、植物の葉を透かして揺れている。

読み進めるうちに、彼の表情は静かに沈んでいく。

「……魔力のない私でさえ、か」

便箋をそっと閉じる。

アリスの筆跡には迷いがあった。
けれど同時に、確かな警告も滲んでいる。

そのとき。

窓の外に、人影が映った。

振り向くと、ロザリアが立っている。

「シド。ルイ王子があなたをお呼びよ」

「……ルイ王子が?」

一瞬の沈黙。

シドは、手の中の手紙を静かに握りしめた。


「承知しました」

低く答え、歩き出す。

温室に残るのは、まだ朝の光だけ。

星祈祭の余韻は、すでに政治の波へと姿を変え始めていた。