魔法使い時々王子

アルシエラの話を聞きながら、アリスの胸に一つの光景がよみがえった。

あの晩餐会。
リトが姿を現した瞬間、場の空気がわずかに張りつめた理由。

誰もが、彼“本人”ではなく、
“魔法使いの王子”を見ていたのだ。

――そういうことだったのね。

「私にとっても、リトは……この国に来て初めて、心から親しくなれた人です」

アリスの言葉に、アルシエラは静かに目を細めた。

「ありがとう」

やわらかな微笑みが、母のものに変わる。

話題は、やがて星祈祭へと移った。

「とても美しい行事よ。星晶へ祈りを捧げ、国の安寧を願う祭り」

アルシエラは窓の外へ視線を向ける。

「けれど……私には、あの力は強すぎるのです。星晶の波動は、まるで胸の奥まで響くようで。だから私は、王宮から静かに祈るだけ」

その声音には恐れも拒絶もなく、ただ“知っている者”の重みがあった。

アリスは、膝の上で手を握りしめる。

言うべきか、迷いは一瞬だった。

「……私の祖国が、星晶を望んでいます。」

静寂が落ちる。

アルシエラの瞳が、わずかに見開かれた。

「あなたも知っていたのですか……」

驚きと、すぐに浮かぶ憂い。

「正直に言えば……この件が広く知れれば、あなたの立場は危うくなります」

敵国の王女。
星晶を狙う国の血を引く存在。

それでも。

「ですが」

アルシエラの声は、揺らがなかった。

「セオは、全力であなたを守るでしょう。そして……私も」

その言葉は静かで、けれど確かな強さを帯びていた。

アリスは胸が締めつけられる。

守られる資格など、自分にあるのだろうか。

それでも――

その優しさは、確かに心を震わせた。