魔法使い時々王子

ごめんなさいね。私の事情を、わざわざお話ししてしまって」

アルシエラはわずかに首を傾け、穏やかに微笑んだ。

「あなたがリトと親しくしてくれているようで、とても嬉しいのです」

その言葉に、アリスは目を瞬かせる。

「あの子は……魔力を持って生まれました。リトの高祖父と同じ、強い魔法の力を」

静かな声だったが、その奥には複雑な想いが滲んでいた。

「この国の王家には、何十年かに一度、強い魔法使いが生まれるのです。古くから“魔法使いの王は偉大”と伝えられてきました」

それは誇りであり、同時に重圧でもある。

「生まれた瞬間から、あの子は“特別”として扱われました。期待され、持ち上げられ……恐れられもした」

アルシエラの指先が、膝の上でそっと重なる。

「子どもだったリトには、それがどういう意味を持つのか分からなかったでしょう。ただ、周囲の視線が自分を見ていないことだけは、きっと感じ取っていた」

“リト個人”ではなく、“魔法使いの王子”を見ている目。

「だから、あの子は人に対して心を閉ざしていきました。自分を守るために」

部屋に、静かな沈黙が落ちる。

アルシエラは優しく、けれど真っ直ぐにアリスを見つめた。

「あなたといるときのリトは、少しだけ肩の力が抜けているように見えます」

その言葉は、責めるでも探るでもない。

ただ、母としての願いが込められていた。