魔法使い時々王子

アリスはルーナと共に王妃の部屋へ向かった。

けれど、歩みは中央棟からどんどん離れていく。

長い回廊を抜け、庭園を横切り、さらに奥へ。

「……どこまで行くの?」

思わずアリスが問いかけると、ルーナは静かに答えた。

「王妃様は、現在離宮でお暮らしです」

離宮——。

本宮とは違い、人の気配もまばらで、どこかひっそりとした空気が漂っている。

やがて重厚な扉の前で足を止め、ルーナが静かに告げた。

「王妃様、アリス様をお連れいたしました」

中へ通される。

部屋の奥、窓辺に立つ一人の女性。

腰まで伸びた艶やかな黒髪が、光を受けて静かに揺れている。

ゆっくりと振り返ると、その顔に浮かんだのは穏やかな微笑みだった。

「ようこそ。わざわざ来ていただいてありがとう」

柔らかく、けれど芯のある声。

「さぁ、どうぞ」

その言葉と同時に、ルーナはその場で深く頭を下げた。

「ここからは、アリス様お一人で」

静かに扉が閉まる。

離宮の部屋に、アリスと王妃、二人きりの空気が落ちた。