魔法使い時々王子

「セオ?大丈夫?」

ベッドに横たわったまま、セオは窓の外へ視線を向けていた。白いカーテンが風に揺れ、その隙間から差し込む光が、彼の横顔をやわらかく照らしている。

「やぁ、アリス。来てくれたのか」

その声は穏やかだったが、どこかかすれていた。

アリスは持ってきた見舞いの花を窓辺にそっと置く。

「星祈祭の準備で無理をしたんですって?」

そう問いかけると、セオは困ったように笑った。

「少し、張り切りすぎただけだよ」

無理をしているのは、きっと祭りの準備だけではない。

星晶のこと――イスタリアの要求のこと。

その両方が、彼の肩にのしかかっているのだと、アリスには分かっていた。

「アリスは初めての星祈祭だろう?きっとこの祭り、気に入ると思うよ。」

優しい声音。

責める色も、疑う色も、何一つない。

胸の奥が、ぎゅっと締めつけられた。

――私の父が、星晶を望んでいる。

それなのに、セオは変わらない。

いつも通りに、誠実で、穏やかで、優しい。

準備や星晶の件で、きっと心身ともに負担が増しているはずなのに、アリスには何も背負わせまいとする。

「……セオ」

アリスは小さく息を整えた。

「何か手伝えることがあれば、言ってね。私、王妃としてちゃんと役に立ちたいの」

セオは一瞬だけ驚いたように目を見開き、それから柔らかく微笑んだ。

「ありがとう」

その笑みは弱々しく、それでも確かに温かかった。

窓の外では、祭りの準備の音が遠く響いている。

星祈祭はもうすぐだ。