魔法使い時々王子

驚きで固まるアリスを前に、リトはクッキーをもう一枚つまみながら続ける。

「そんなに驚くことか? 兄さんが結婚するってことは、そういうことだろ」

「だ、だって……! 王子が、こんなところで一人で……!」

アリスは図書館を見回した。誰もいない、静かな空間。毎日同じ時間、同じ場所で本を読んでいる少年。

「みんな忙しいからな。ここは静かだし、本も多い」

リトはそう言って、本棚の方へ視線を向けた。

「それに――」

少しだけ言葉を選ぶように間を置く。

「俺は、こういう場所の方が落ち着くんだ」

その横顔を見て、アリスは胸の奥がきゅっと締めつけられるのを感じた。

(幽霊じゃ、なかった)

それなのに、なぜか安心したような、少し寂しいような、不思議な気持ちだった。

「……そっか」

アリスは小さく息を吐いて、微笑んだ。

「じゃあ、改めて。私はアリス。あなたのお義姉さんになる予定の人よ」

リトは一瞬だけ目を丸くし、すぐに視線をそらす。

「……変な言い方するな」

その耳が、ほんのり赤くなっていることに、アリスは気づいた。