魔法使い時々王子

アリスは部屋に戻ると、机に向かい、シドに手紙を書いた。
王宮の奥に「アウルム図書館」という居心地の良い図書館を見つけたこと。
そして、その図書館にはリトという名の“幽霊”がいるらしいこと。

文字を綴りながら、アリスは昼間の少年の顔を思い浮かべていた。
幽霊だなんて、と自分でも半信半疑だったが、不思議と恐ろしさはなかった。

書き終えた手紙を二つに折り、そっと窓辺に置く。
すると手紙はふわりと宙に浮かび、白い光をまといながら、鳥の形へと姿を変えた。
紙鳥は一度だけ羽を震わせると、夜の空へ静かに飛び立っていった。

――場面は変わり、シドのもとへ。

その日の夜、仕事を終えたシドは、部屋に届いていた一通の手紙を手に取った。
アリスからだと気づき、自然と口元が緩む。

だが、読み進めるうちに、シドの眉がわずかに寄った。

「……幽霊?」

思わず、声が漏れる。
図書館の幽霊――アリスの文面からは悪意や危険な気配は感じられない。
むしろ穏やかで、どこか人懐こい存在のように書かれていた。

それでも、シドの胸には小さな不安が残った。
遠く離れた場所で、彼女が得体の知れない存在と関わっているかもしれない。

「……気をつけろよ、アリス」

誰にも届かぬ声でそう呟き、シドはもう一度、手紙を静かに読み返した。