始まってしまった…
「で…誰を…」
「私…は脱落したくない」
「私もよ」
誰だってそうだ。でも…
「でも、誰かを蹴落とすこともできない」
「…ほんと、あなたは純粋ね」
純粋?
「自分の願いが叶う。こんな状況、誰かを蹴落としてでも叶えたいと思わない?」
「…思わない」
「…じゃあ、どうする?」
「…」
こうしている間にも時間は過ぎていく。
「…」
「あの、ちょっといい?」
「何よ」
「あなた、デスゲーム経験者よね?」
…ぎくっ。
「それも、あやめの」
「…あー、バレたか」
「いや、バレたとか、そう言う話じゃない」
え?

「私も、あやめのデスゲームに巻き込まれた」

「っえええ!?」
杏奈さんが!?まさか…?
「私たちがやらされたのは、リアル人狼ゲーム。名の通りリアルの人狼ゲーム」
やらされるデスゲームの内容も違うんだ…
「…それに、妹も参加した」
「え!妹さんも!?」
じゃあ妹さんの死因って…
「妹は、リアル人狼ゲームで殺された。それも私に」
「妹を…殺した?」
まさか。
「妹は優等生。私は問題児だった。親に愛されるのも神奈で、それが嫌で殺したの…でもそんなつもりじゃないかった」
そんなつもりじゃない?
「当たり前だって…思ってたの。私より神奈の成績がいいことも、神奈の方を親が愛したのも。…その後私も殺されて、死後の世界で神奈と会った」
「え!?死後の世界!?じゃあ、杏奈さんは生き返ったってこと!?」
「説明すると結構長くなるけどね」
少し杏奈さんが笑顔を見せた。
寂しそうに。
「そこで私、全て謝ったの。ごめんなさいって。本気で思ってた。思ってたのに…」
杏奈さんから涙が溢れる。
「神奈は、信じてくれなかった…」
そんな…
「そして死後の世界ででもなぜかデスゲームがあって、神奈は自爆し、私だけが生き返り、神奈は世界中の人々の記憶から姿を消した」
「そんな…」
「…最低な姉だよね。今ここで神奈を生き返らせたとしても…」
『は?私を殺したお姉ちゃんと関わりたくないんだけど』
「…なんて言われちゃうかもしれないな…」
杏奈さんにはそんな過去があったなんて…

「だから、脱落者は私でいいよ」
「!?そんなっ…」
「最低な姉に、生きる価値はないよね?かなたちゃんの願い事を叶えたら、私も、神奈も、他の殺された子たちも…みんな幸せになれるから」
「…っだからって!!!」
「気持ちはわかるよ」
「バカ!!!!!!!」
「!?」
「きっと神奈さんと杏奈さんは、分かり合える!!!神奈さんも今頃、あっちの世界で、お姉ちゃんに会いたいって、思ってるはず!!!…確かに最低な姉かもしれない。でも、生き返らせたいと思うほど、あなたは妹さんを思っているんでしょ?こんなに妹さんを思えるのは、血のつながった、あなたしかいないじゃない!たとえ私が神奈さんを生き返らせてもきっと…妹さんは、喜んでくれないよ?」
「!」
届け。私の思い。
「そう、だよね…でもじゃあ…脱落者は…?」