宇宙で、推しとウエディング!?

 おそるおそる目を開くと、天井をおおいつくしている、満開の桜が見えた。
 ここが、ブロッサムルーム。
 左右には、木の肌の壁。
 そして真ん中には、大きな分厚い木の板で出来ている、テーブルとイス。
 前の、シャボン玉のように薄いガラスの向こう側には、真っ暗な闇がどこまでも続く。
その闇のなかで、赤や青の光が集まった星雲たちが、煌々ときらめいている。
 銀や黄金の星屑は、まるで宝箱をひっくり返し、さらさらと流れているよう。
「すごく、きれい! こんなに近くで宇宙を見れる日が来るなんて、思わなかったなあ」
 こんなにステキな景色を見ながら、サカエくんと宇宙旅行なんて、いまだに信じられないや。
 そのとき、サカエくんがあたしの隣に立ち、あるものをわたして来た。
「花嫁候補のリストだ。読んでおいてくれ」
「は、はい」
 ろまんちっくな きぶん だいなし。
サカエくん、わたしのことまるで眼中にないんだよね。かなしいし、くやしいぞ。
 でも、わたし、ついさっきまでは、サカエくんのこと、見てるだけで満足だったはずなのに。
 花嫁を探してるなんて言われちゃったら、そりゃ……あがきたくもなるってもんだよ。
 ナナセに知られたら、笑われちゃうよ。
 そう言えば、ナナセ、どうしてるかな。
「ねえ、サカエくん。地球のみんな、わたしたちがいなくなったって、警察に連絡しないかな……」
「心配するな。宇宙空間と地球では、体感時間が違う。今、地球では数秒しか、時間はたっていない」
「ええ! ほんと?」
「ああ。だから、気がねなくついてくればいい」
 わああ。カッコいい! どこにでも、ついていきます!
「では、第一の花嫁候補の元へ向かう。クラシカル星雲の、小惑星チロルだ」
 花嫁候補のリストによると。
『第一候補の花嫁
 クラシカル星雲・小惑星チロル
 ホーロー性レトロ型アンドロイド
 名称・ポピー
 年式 恒星ラビット暦十万年型』
 なにこれ…?
「アンドロイド、って」
 たしか、ロボットみたいなものだったっけ?
 ウソでしょ。これが、花嫁候補……?