宇宙で、推しとウエディング!?

「地球以外にも、花嫁を探して、何名か、すでに最終審査に入っている。お前には、それに付き合ってもらうことになる」
「最終審査って、なにするの?」
「それは、のちのち説明する。それじゃあ、目的の星に行くぞ。ブロッサムルームに入れ」
 サカエくんが、目の前の桜の御神木へと、わたしを手まねく。
「ブロッサムルームって……?」
「この桜の木は、俺たちの宇宙移動の、唯一の手段だ。地球でいうところの宇宙船や、UFOといったものと同義だな」
 桜の木を見上げ、ふっ、と目を細めるサカエくん。
 サカエくんが笑ってるところ、はじめて見られた。サカエくんって……こんなふうに、笑うんだ。
 笑ってる顔、すごくステキだな。
 桜の木に、そっと触れるサカエくん。
 わたしは一人で、ドキドキと心臓を鳴らしていた。
 だって、今から雪之町くんと二人っきりで、宇宙を旅するんだと思うと、緊張やら、喜びやら、なんやらと、色んな感情がこみあげてくるんだもん。
 まあ目的は、サカエくんの花嫁探しなんだけどねっ?
 あれ。思い出したら、一気に熱が冷めてきたぞ。気分が、落ち込んできたぞ。
「行くぞ。つかまれ」
 サカエくんが左手を、わたしの前にさしだしてくれた。
 手を、つなげって!
 わたしはとたんに嬉しくなって、満面の笑みでうなずいた。
 ゆっくり、サカエくんの手をにぎる。単純だなあ、わたしって。
 するとサカエくんは、ずんずんと立ち止まることなく桜の木へと歩き出す。
 え? ぶつかるよ!
 すると、信じられないことに、サカエくんのカラダが、桜の木のなかにするん、と入っちゃった。
 見た目だけだと、わたしと手をつないだままの左腕が、幹からニョキっと、はえているみたいになってる。
「サカエくんっ? うそっ? 大丈夫? なにこれッ!」
「大丈夫だ。いいから、安心して来い」
 そう言って、グイッと、腕を引っぱられた。
 わたしは握っているサカエくんの手を少しだけ力をこめて、ギュ、とにぎった。
 そして、意を決して、目をつむり、幹のなかへと飛び込んだ。
 そうだよ、だってサカエくんがいるんだもん。こわいものなんか、ない!
 すると、シャボン玉の膜をすりぬけたような感覚が、カラダに伝わってきた。
 そのとき、ああ今、木の幹をとおりぬけたんだ、と思った。