宇宙で、推しとウエディング!?

 えッ。大丈夫じゃないのッ?
 サカエくんは、ゆらりと立ち上がると、イスに倒れるように座りこんだ。
「ポピー。昨日、お前に追加したデータに、【ブロッサムルーム管理記録】が入っていたな。ちょうどいい、出してくれないか」
「わかりました」
 ポピーは、手のひらで空中を横にスライドする動作をする。
 すると、円グラフや折れ線グラフなどが表示された画面が、空中に現れた。
 見出しに、【ブロッサムルーム管理記録】と書かれている。
「ここを見ろ」
 折れ線グラフを指さす、サカエくん。
 グラフのようすから、何かが、一気に下がっていることを示していた。
「これは、なんのグラフ?」
「桜の木の、水分だ。今、限りなく無いに等しい。これでは、ビトーズ星へワープどころか、この先の俺たちの食料も危うい」
 桜の木の力が、そんなにやばいことになってるなんて!
「でも、水分がないだけで、食料まで?」
「当たり前だろう。あの食料は、桜の木の御神木のお恵みだぞ。桜の木の力が無くなれば、俺たちもいっしょに朽ち果てるしかないんだ」
 そっか。植物は、水がないと枯れちゃうんだもんね。
 あの桜推しの食べ物は、桜の木のエネルギーが作ってくれていたものだったんだ。
 エネルギーがなきゃ、桜モチもなにも、作り出せないよね……。
「人間は、食べ物がなきゃ死んでしまいます。シュリのためにも、なんとかしなければなりません」
 腹黒キャラになっちゃった、なんて思ってたけど、優しいところは変わってないな、ポピー。
 サカエくんは宇宙航海図をジッと見つめ、近くに寄れそうな星を探している。
「でも、なんで急に桜の木の水分がなくなったのかな?」
「あの星には、松の木しかなかった。むしろ、松の木だからこそ、あの環境に適したと言える」
「松の木だからこそ、って……?」
 サカエくんは宇宙航海図から目を話すことなく、続けた。
「松の木には、厳しい環境にも耐えられる、強さがある。だが、ブロッサムの桜には、あの星での長時間の滞在は厳しいものだったのだろう。まさか、環境変化の影響がここまでとは……予測できなかった」
「さっき、チロルを一番にしたのは……って言ってたよね」