真ん中で、満開に咲きほこる桜の木の下にいる雪之町くんに、近づいていく。
本に目を落としている雪之町くんに、何から話しかけようかと、考える。
すると、急に彼がバッと顔をあげた。
ものすごくビックリして、心臓が口から、飛び出すかと思った。
切れ長の、宝石みたいなグリーンの瞳が、わたしを見てる!
そのせいで、ただでさえ緊張で赤かった顔が、ますますリンゴみたいになって、心臓はバクバクと動いていて、今にも爆発しそう。
だけど、雪之町くんは顔を上げると、そのままただ、ジッとしてるだけ。
どこか宙を見ている、その整いすぎた顔は、まるで人形みたいだ。
沈黙に耐えられなくなったわたしは、不自然ながらも声を上げた。
「えっと、何、読んでる……んですか?」
年上なのか年下なのか、未だに知らないわたしの口から飛び出したのは、敬語だった。
「……魔法の本」
……え?
そんな返事が返ってくるとは夢にも思ってなくて、わたしはポカンと口を開けたまま、首を傾げた。
「まほう、ですか?」
「そうだな。魔法の本、だな」
「ま、マホー……」
マホーって、あの魔法? 杖をふると、不思議なことが起きちゃう、あの魔法?
雪之町くんって、真っ白の髪だし、緑の目だし、ちょっと日本人離れしてるなあ、とは思ってたけど、もしかしてイギリス人だったのかな。
イギリスは、魔法の国って言うもんね。
「……驚かないのか?」
「雪之町くんって、魔法使いなんですか? イギリスの人って、本当に魔法使いだったんですね!」
「イギリス? なんだ、それは」
「え。イギリス、知らないんですか?」
「魔法というのは、冗談だ。地球人は、ジョークが好きだと聞いていたが、お前はそうでもないようだな」
「ジョーク? 地球人?」
えーと、待って。
気になることが多すぎるけど、一個ずつ片付けよう。
「さっき魔法の本は、なんですか?」
「あれは、ただの辞書だ。地球の言語の勉強のために、毎日読んでいる」
「地球の、言語?」
「桜の木によって、自動翻訳されているとはいえ、地球特有の言語の理解がなければ、意味がないからな」
「え、えーと……」
脳の処理が追いつかない。これって、ドッキリ?
今はやりの、モニターでわたしがビックリしているのを見られてる、あのドッキリテレビじゃないの?
本に目を落としている雪之町くんに、何から話しかけようかと、考える。
すると、急に彼がバッと顔をあげた。
ものすごくビックリして、心臓が口から、飛び出すかと思った。
切れ長の、宝石みたいなグリーンの瞳が、わたしを見てる!
そのせいで、ただでさえ緊張で赤かった顔が、ますますリンゴみたいになって、心臓はバクバクと動いていて、今にも爆発しそう。
だけど、雪之町くんは顔を上げると、そのままただ、ジッとしてるだけ。
どこか宙を見ている、その整いすぎた顔は、まるで人形みたいだ。
沈黙に耐えられなくなったわたしは、不自然ながらも声を上げた。
「えっと、何、読んでる……んですか?」
年上なのか年下なのか、未だに知らないわたしの口から飛び出したのは、敬語だった。
「……魔法の本」
……え?
そんな返事が返ってくるとは夢にも思ってなくて、わたしはポカンと口を開けたまま、首を傾げた。
「まほう、ですか?」
「そうだな。魔法の本、だな」
「ま、マホー……」
マホーって、あの魔法? 杖をふると、不思議なことが起きちゃう、あの魔法?
雪之町くんって、真っ白の髪だし、緑の目だし、ちょっと日本人離れしてるなあ、とは思ってたけど、もしかしてイギリス人だったのかな。
イギリスは、魔法の国って言うもんね。
「……驚かないのか?」
「雪之町くんって、魔法使いなんですか? イギリスの人って、本当に魔法使いだったんですね!」
「イギリス? なんだ、それは」
「え。イギリス、知らないんですか?」
「魔法というのは、冗談だ。地球人は、ジョークが好きだと聞いていたが、お前はそうでもないようだな」
「ジョーク? 地球人?」
えーと、待って。
気になることが多すぎるけど、一個ずつ片付けよう。
「さっき魔法の本は、なんですか?」
「あれは、ただの辞書だ。地球の言語の勉強のために、毎日読んでいる」
「地球の、言語?」
「桜の木によって、自動翻訳されているとはいえ、地球特有の言語の理解がなければ、意味がないからな」
「え、えーと……」
脳の処理が追いつかない。これって、ドッキリ?
今はやりの、モニターでわたしがビックリしているのを見られてる、あのドッキリテレビじゃないの?



