そう言いながら、サカエくんは使った湯のみを、桜の幹のくぼみに入れている。
さっき、桜のお菓子が入っていたくぼみとは、別のくぼみだ。
「サカエくん、何してるの?」
「桜の木に湯のみを、洗浄してもらうんだ」
「そんなことまで、してくれるのッ?」
「桜の木は、万能だからな」
万能すぎでは……なんて思っていると、ピカピカに洗われ、みがかれた湯のみが、サカエくんの腕の中に飛び込んできた。
「誰か、いるの? 桜の木のなかに」
「惑星ブロッサムの神、とでも言おうか」
惑星ブロッサム、恐るべし。
「そう言えば、学校にいるとき、桜の木が自動翻訳してくれてる……みたいなこと言ってたけど、そのチロルって星でも、言葉は大丈夫なの?」
「問題ない。桜の木の恩恵は、その星にいれば、限りなく続く。それが、ブロッサムの御神木のチカラだ」
す、すごい……。もはや、すごいしか言えない。
「さあ、行くぞ。時間がない。まだ行かなくてはいけない星が、あるんだからな」
湯のみを桜のくぼみにていねいに置くと、サカエくんはわたしに向かって手を差しのべてくれる。
サカエくんは、とてもやさしい。
透き通ったエメラルドのひとみが、長く白い前髪のスキマからのぞいてる。
そこに、わたしがうつってるなんて、今でも信じられない。
サカエくんの手を握ってる、わたし。
これがもし、夢だったとしたら、もう覚めないでくれていい!
サカエくんに手を引かれ、シャボン玉のように薄いガラスの窓の前に立つ。
その窓の向こう側には、すでに小惑星チロルの地上が見えていた。
「いくぞ」
「え? このまま?」
「ああ」
「待って、待って! あのね、地球人って、宇宙空間では息ができないんだよね。酸素がないと、死んじゃうの。それでさ、チロルにも酸素があるかどうかわからないじゃん? だから」
「知っているぞ」
「知ってたのっ?」
「ブロッサム星人も、宇宙では息できない。地球人と、一緒だ」
「それじゃあさ、なんで宇宙服とか、酸素ボンベとか……ないの?」
今なんの用意もなく、すっごい軽装で、ブロッサムルームから飛び出そうとしたよね?
「宇宙服? 地球では、そういうものを使っているのか」
「え? 惑星ブロッサムは?」
「俺の星では、こうだ」
サカエくんは、わたしの手をグイッと引っ張って、ガラスの窓に飛び込んだ。
「われるーッ」
さっき、桜のお菓子が入っていたくぼみとは、別のくぼみだ。
「サカエくん、何してるの?」
「桜の木に湯のみを、洗浄してもらうんだ」
「そんなことまで、してくれるのッ?」
「桜の木は、万能だからな」
万能すぎでは……なんて思っていると、ピカピカに洗われ、みがかれた湯のみが、サカエくんの腕の中に飛び込んできた。
「誰か、いるの? 桜の木のなかに」
「惑星ブロッサムの神、とでも言おうか」
惑星ブロッサム、恐るべし。
「そう言えば、学校にいるとき、桜の木が自動翻訳してくれてる……みたいなこと言ってたけど、そのチロルって星でも、言葉は大丈夫なの?」
「問題ない。桜の木の恩恵は、その星にいれば、限りなく続く。それが、ブロッサムの御神木のチカラだ」
す、すごい……。もはや、すごいしか言えない。
「さあ、行くぞ。時間がない。まだ行かなくてはいけない星が、あるんだからな」
湯のみを桜のくぼみにていねいに置くと、サカエくんはわたしに向かって手を差しのべてくれる。
サカエくんは、とてもやさしい。
透き通ったエメラルドのひとみが、長く白い前髪のスキマからのぞいてる。
そこに、わたしがうつってるなんて、今でも信じられない。
サカエくんの手を握ってる、わたし。
これがもし、夢だったとしたら、もう覚めないでくれていい!
サカエくんに手を引かれ、シャボン玉のように薄いガラスの窓の前に立つ。
その窓の向こう側には、すでに小惑星チロルの地上が見えていた。
「いくぞ」
「え? このまま?」
「ああ」
「待って、待って! あのね、地球人って、宇宙空間では息ができないんだよね。酸素がないと、死んじゃうの。それでさ、チロルにも酸素があるかどうかわからないじゃん? だから」
「知っているぞ」
「知ってたのっ?」
「ブロッサム星人も、宇宙では息できない。地球人と、一緒だ」
「それじゃあさ、なんで宇宙服とか、酸素ボンベとか……ないの?」
今なんの用意もなく、すっごい軽装で、ブロッサムルームから飛び出そうとしたよね?
「宇宙服? 地球では、そういうものを使っているのか」
「え? 惑星ブロッサムは?」
「俺の星では、こうだ」
サカエくんは、わたしの手をグイッと引っ張って、ガラスの窓に飛び込んだ。
「われるーッ」



