宇宙で、推しとウエディング!?

「あ、ごめん。地球の食べ方の話なんだけど。桜モチみたいなお菓子は、黒文字……細い棒で、小さく切って食べてたから、それを探してたんだ」
「小さく切る? いちいち、そんなことをするのか。俺たちは、手で持って食べていた」
「まあ、地球の中の、私たちの国の文化だからね。そういうのも、あるよ」
「なるほど。しかし、その食べ方は、美しいのかもしれないな」
 今回は、ブロッサム星の食べ方で、食べてみる。
 桜モチを手に取る。やわらかい。そして、いい香り。
 食べてみると、やさしい春の味。
 ブロッサム星の桜モチも、おいしい。
 食べ終わり、桜茶をいただきながら、向かい合って座っているサカエくんに、わたしは聞いてみた。
「ねえ、サカエくん。他にも、地球に来て驚いたこととか、ある?」
「地球は広いから、すべては回り切れなかった。俺が行ったのは、日本と言う場所だけだ。桜が、一番きれいだと思ったから。食べ物も、色んなものがあった。キレイなモノや、愛らしいもの。桜だけじゃなく、色んな形のものがあった」
「ああ、それは和菓子のことかな。桜モチも、そのひとつだよ」
「和菓子。なんだそれは」
 サカエくんが目を丸くして、身を乗り出してくる。
 わたしはドキッとしながらも、ブロッサム星人にもわかるような説明をするために、頭をフル回転させ、児童館で聞いた話を思い出す。
「季節をあらわすお花や行事とかを、手のひらサイズにしたお菓子だよ。菊の花とか、星の月とか、桜の花のかたちの和菓子もあったんじゃない?」
「それは、見なかった……。地球の桜モチも、このブロッサム星のものと同じカタチなのか」
「うん、そっくり」
「いつか、食べてみたいな。俺の一番の好物なんだ、桜モチは」
「そうなんだ……! うん、必ず食べよう!」
 すると、サカエくんは、また少しだけ目を細め、表情をゆるめた。
 うん、サカエくんのその笑ってる顔、わたし、いちばん好きだな……。
 その顔を見れただけで、なんだかもう胸がいっぱいだよ。
 小惑星チロルは、とても小さな星らしい。
 そうは言っても、わたしは地球しか住んだことがないし、どのくらい小さいのかなんて、わからないんだけどね。
 頭にクエスチョンマークを浮かべていたらしいわたしを察してくれたのか、サカエくんが説明をつけたしてくれた。
「要するに、一日で回り切れる広さってことだ」