「逃げていいんだよ」と彼は言ってくれた。

　自宅に帰りスマホで【小早川春希】を検索すると、一番に出て来たのは【原作者激怒！　勝手に作られたヒロイン】という記事が出て来た。

　脚本家が勝手にヒロイン像を捻じ曲げたと書かれ、全て悪いのは脚本家だという内容だった。その記事についたコメントも脚本家を責める声が圧倒的に多く、中にはかなりの誹謗中傷もあって、読むだけで胸がえぐれそうになった。

　そしてその記事は半年前のものだった。私に『逃げてもいいんだよ』と言った夜、彼は私以上に世間から叩かれて辛い状況だったはずだ。それなのに、私に優しくしてくれた。そんな彼の優しさに改めて感動する。

　彼の為に私ができることはないだろうか？　彼に恩返しがしたい。
　ベッドに寝転がりながら、私ができることをずっと考えていた。