「逃げていいんだよ」と彼は言ってくれた。

 体験講座を受けた次の木曜日、第一回目の初心者講座に出るため、私は家から自転車でショッピングセンターに向かった。

 三階建てのショッピングセンターは市内で一番大きい商業施設で、スーパーの他に二百の専門店が入り、大抵のものはここに来れば揃う。営業時間は朝の九時から夜十時までとなっている。

 週一で通うことになったカルチャースク―ルもショッピングセンターの三階に入っていた。

 今日はちゃんとアイメイクをして、服は白の上品なカットソーとグレーのパンツを合わせた。先週よりきちんとした服装を心がけた。

 午後六時四十五分にカルチャースクールに到着し、受付で教えられた教室に入ると、体験講座の時の三倍くらいの人がいた。
もう前から三分の二の所まで席は埋まり、私は後ろから三列目の長机に腰を下ろした。早めに来たつもりだったけど、そうでもなかったよう。できればもう少し前の席で彼の講義を聞きたかった。

 前の席には派手な服装の女性たちが座っていた。その中に体験講座で見かけた気の強そうな女性の姿もあった。

「ここいい?」

 声をかけられてハッとした。大塚さんだった。