「逃げていいんだよ」と彼は言ってくれた。

 飲み会は二時間でお開きになり、大塚さんに誘われてショッピングセンターまで足を延ばした。
 土曜日でも閉店一時間前のカフェは昼間と違い、すいていた。

「今夜もソファ席ゲット」

 アイスコーヒーを持った大塚さんがソファに腰を下ろす。

「藍沢さん、一緒に座ろう」

 トントンと大塚さんが隣を叩く。
 普段よりテンションの高い大塚さんが面白い。

「はいはい。座りますよ」
「小早川先生のシナリオ講座、来週で終わっちゃうね」

 大塚さんがしみじみと口にする。

「そうですね」

 過ぎてみればあっという間の三ヶ月だった。

「藍沢さんはこの後続ける?」

 首を左右に振った。

「私はここで終わりにします」

 シナリオを書くのは楽しかったけど、私の本当にやりたいこととはやっぱり違う。