「逃げていいんだよ」と彼は言ってくれた。

「美桜、起きてたのね」

 スポーツドリンクを持った母が部屋に入って来る。

「お母さん、この花は?」
「ついさっきシナリオの先生が届けに来てくれたのよ。それで美桜にお見舞いだって。たかが風邪で大げさね」

 母が可笑しそうに笑う。
 めちゃめちゃ嬉しい。
 先生からのお花だと思ったら、ありがたさが増した。

「早く治さないとね」
「うん」

 母が部屋から出て行くと、私はスマホを手に取り、一文字、一文字に感謝の気持ちを込めて、先生にお礼のメッセージを書いた。

【ありがとうございます。飲み会までには復活します!】

 送信すると、すぐに返事が来た。

【藍沢さんに会えるのを楽しみにしています】

 先生がくれたメッセージを噛みしめるように読んだ。
 早く先生に会いたい。