木曜日、面接から帰って来た瞬間、寒気に襲われ、熱を測ると38度まで上昇していた。
今日は先生のシナリオ講座がある日だから熱があっても行きたかった。しかし、母に熱があることがバレ、止められた。
「他の方にうつしたら迷惑になるでしょ」と、すごい剣幕で叱られ、返す言葉がなかった。

 大塚さんに今日は休むと連絡をし、ベッドに横になった。
 月曜日に先生の家を出てから、先生と顔を合わせる機会はなく、先生があのシナリオを読んだかずっと気になっていた。
 勢いで渡してしまったけど、みんなと同じタイミングで提出すれば良かったと、今さらながら後悔している。

 あのシナリオを読んで、先生は私の気持ちに気づいただろうか? それとも、ただの創作だと思っただろうか?
 そんなことを悶々と考えながら眠りに落ちた。そして、先生がどこかに行ってしまう夢を見て、目が覚めた。夢だとわかっていても不安になる。

 スマホを見ると大塚さんの返事の他に先生からも来ていた。

【大塚さんから風邪だと聞きました。お大事にして下さい】

 何だかそっけない文面に思えた。
 もしかして、私のシナリオを読んで、私の気持ちに気づいた先生は、私との距離を取ろうとしているのだろうか?
 熱のせいか、思考が悪い方へと向かう。
 弱っていると思いながらまた寝た。そして、目が覚める。スマホを見るとまた先生から届いていた。

【俺の風邪だったらごめん。お見舞いの品はお母さんに渡しといたから】

 ベッドから起き上がると、さっきまでなかったアレンジメントの花籠が視界に入る。
 オレンジと黄色の花の組み合わせが可愛かった。
 添えられたメッセージカードに手書きで【早くよくなって下さい】と書いてあった。見慣れた先生の字だ。

 まさか、先生お花を届けに来てくれたの?