「逃げていいんだよ」と彼は言ってくれた。

「一緒に暮らそうと言ったのは、俺がそうしたかったからだ。弱っている藍沢さんにつけ込んで、とんでもないことを言った。藍沢さんを助けるふりをして、本当は俺が藍沢さんと暮らしたかったんだ」

　まるで私を好きみたいな言葉に鼓動が速くなる。

「先生、私はどこにも行きませんから。とにかく今は余計なことは考えず、休んで下さい」
「泊まってくれる？」
「はい」

　先生がほっとしたように微笑んだ。その表情が愛しい。弱っている先生を見て、ますます好きになった。

　熱を測ると３９度もあった。風邪薬を飲んでもらい、とにかく先生には睡眠を取ってもらった。
　先生が寝ている間に私は自宅に戻り、着替えなどを取って来た。二、三日泊まる覚悟で荷物を持って家を出た。そして本当に私は二日泊まることになった。