「逃げていいんだよ」と彼は言ってくれた。

 先生に一緒に暮らさないかと言われて、すごく嬉しかった。でも、これ以上、先生に甘えられない。それに先生には片思いの人がいる。だから、この誘いを受ける訳にはいかない。

「私、好きな人がいるんです。だから先生とは暮らせません」

 そう言えば先生はわかってくれると思った。
 次の瞬間、窓の外がピカッと光って、激しい落雷が落ちた。

「きゃっ」

 思わず身を竦めると、先生が「大丈夫だよ」と言ってくれた。
 先生が側にいてくれて良かった。
 さらに雷鳴が轟き、いきなり停電になった。
 辺りは真っ暗だ。

「藍沢さんはここにいて。ブレーカー見てくるから」

 先生が立ち上がる。
 ずっと先生の腕の中にいたから、先生の気配がなくなることに不安になった。

「私も一緒にダメですか? 暗いのが苦手で」

 つい甘えたことを言ってしまう。今夜の私は先生に甘え過ぎている。