「逃げていいんだよ」と彼は言ってくれた。

「特にないですけど。でも、私が行って大丈夫ですか? シナリオに特に興味があるわけじゃないし」
「大丈夫よ。誰でもご自由にお越し下さいって書いてあるでしょ。私ね、映画が好きなの。それでね、ちょっとシナリオを書いてみたいなって思ったんだ。でも、私みたいなおばさんが一人で教室に通うのがちょっと不安で。だからお願い。今日は私の保護者としてくっついて来て欲しい。ランチおごるからさ」

 大塚さんが手を合わせ、私に拝む。

 お世話になっている大塚さんにそこまでお願いされては断れない。それにネットカフェで時間を潰すよりは大塚さんと一緒にいた方が楽しそうだ。

「ランチ奢らなくていいですよ。私も今、大塚さんの話を聞いて少しだけ興味持ちましたから。私で良かったらお供しますよ」

 ぱあっと大塚さんの表情が明るくなる。

「藍沢さん、ありがとう!」