下校時、たまたま木田と下駄箱で一緒になった。
テスト前だから木田は部活がなかったのだろう。

「いいところにいるじゃねーか」

スルーすればいいのに、オレはまた余計な行動に出てしまう。

「北河も帰りか?速攻だな」

「オレ、今日もバイトだから」

「余裕~」

目を丸くする木田。

「全然余裕じゃねーよ。だから木田ちゃん、駅まで乗せて」

「男と二人乗りする趣味はないよ」

軽く拒否られた。

「女なら乗せるわけ?」

「そりゃ、喜んで」

「例えば、沙菜とか?」

沙菜の名前を出すと、木田は一瞬表情を強張らせた。

「もちろん、大歓迎」

だけど、すぐに柔らかな顔に戻る木田。

「おまえら、そう言えばどうなってんの?
1学期にきっかけ作りに協力したんだから、教えろよ」

「いや…、報告するような進展はないよ」

「マジで?」

「残念ながら」

こいつ馬鹿か?
思わず木田の顔をまじまじと見てしまった。

沙菜が好きなのはおまえなんだぞ。
気付いてねーの?
あんなにわかりやすいのに?
致命的鈍感男だ…。

「ちゃんと告白してないわけ?もしかして、木田って草食系?」

「みすみす玉砕するってわかってて、行動に出れるほど根性ないよ、俺は」

なんだこいつ…。
なんだか無性に腹が立ってきた。
木田は沙菜の気持ちに気付いてねーのかよ。

「そんな悠長なこと言ってていいのか?
もたもたしてると他のヤツに横から取られるぞ」

「なんだ?北河は俺と三波さんが付き合った方がいいのか?」

「別に、どうでもいいけど」

本当はそんなことは嫌だ。
木田じゃなくても、誰であっても、沙菜が男と付き合うなんて、考えただけで嫌だ。

話しながら歩いていたら自転車置き場に着いた。