幼馴染に彼女ができたけどなんで私が嫉妬されてるの？

予感はあった。
最初から沙菜は木田を褒めていた。
オレとは違う、健全な雰囲気を纏った木田。
男のオレから見ても、爽やかでいいヤツだ。
オレと違って捻くれたところがない。
オレとは真逆の木田。

次第に二人が仲良くなっていることは知っていた。
知っていて、何もできなかった。
勝手に嫉妬して、沙菜に嫌な思いをさせただけだ。

後は指を咥えて見ているしかなかった。
木田は沙菜のことを本気で好きだと思う。
なんだ、あいつら相思相愛かよ…。
オレの出る幕はやっぱりないんだ。

トボトボと、オレも家に入った。
沙菜と木田が付き合い始めるのは時間の問題だろう。

オレは諦めていた。
いや、諦めようとしていた。
それなのに、沙菜の気を惹きたくて仕方がなかった。

オレは少し自分の立ち位置を変えることにした。
どうせオレに寄って来るような女は見た目重視の面食いばかりだ。
そんな女たちが喜びそうな振る舞いなんて、簡単にわかった。
心にもないお世辞言ったり、自分の失敗談で笑わせたり、満遍なく平等に笑顔を見せとけばいいんだ。

セックスも止めた。
正直やりたかったけど、そろそろ噂も大きくなって、リスクも高くなってきたし。
沙菜が好きだと気付いてしまってから、どうにも他の女を触るのが億劫だった。

ホント、滑稽。
沙菜がオレに笑いかけることなんかもうないだろうに、オレは沙菜以外の女なんかいらなくなってしまったんだから。

適当にお愛想振りまいてたら、すっかりアイドル的存在になってしまった。
なんと、ファンクラブもできたらしい。
女ってくだらない。
オレの本質なんかどうでもいいんだろうな。
オレに騙されて、馬鹿みたいだ。

それでも、自分を演出することを止められなかった。
オレは前よりも随分明るい存在になった。
前はヒソヒソと噂されたが、今は大っぴらに名を呼ばれ、手を振られる。
そんなオレを、沙菜が少しでも意識してくれるんじゃないかという思いが捨てられなかった。