幼馴染に彼女ができたけどなんで私が嫉妬されてるの?

今更自分の気持ちにに気付き、途方に暮れた。
どうしてもっと前に気付けなかったんだろう。

嫌がる沙菜に、何度もキスして。
酷い言葉をぶつけて傷つけて。
最低な行為を何度も繰り返して、その現場を沙菜にも見られていて。
もうとっくに嫌われてるってのに…。

オレは今まで以上に沙菜を避けるようになった。
どうしていいかわからなかったからだ。

それなのに、バイト帰りに沙菜が自転車をしまう姿を見つけて、思わず声をかけてしまった。

「よう」

沙菜はギクリと一目でわかるほど動揺していた。
ギョッとして振り向いて、オレと目が合うと沙菜はさっと逸らした。
その反応に落ち込む。

「最近随分おモテのようで」

だから、つい嫌味を言ってしまった。
馬鹿なオレ。

「で、沙菜ちゃんは誰と付き合うんだよ」

本当は気が気ではなかったんだ。
沙菜が誰かと付き合うんじゃないかって。

「付き合わないわよ」

だから、沙菜がそう答えたとき、思わず笑みがこぼれた。

「へぇ~!沙菜、理想たけーのな」

だけど、次の言葉にオレは凍りついた。

「私、好きな人いるから」

ギュッと心臓を握られたような苦しさ。
沙菜に、好きな男がいる…?
思い当たるヤツは一人しかいなかった。

「……それって、木田のことか?」

「蓮には関係ない」

冷たく言い放ち、沙菜は家に入ってしまった。
取り残されたオレは呆然と立ち尽くしていた。

やっぱり…。
沙菜は木田のことが好きだったんだ…。